多摩川散歩

東京都と神奈川県の境を悠然と流れる多摩川。多摩川の魅力をたっぷり紹介します。

堰(せき)とは何か、水門とは何か?
ダムと堰と水門の違い

ダムと堰と水門の違い~ダムと堰の違い/堰と水門の違い。わかったようで解らないこれらの違い。ここでは、ダムと堰と水門の違いについて解説します。これで納得!堰堤(えんてい)の話。

二ヶ領宿河原堰~堰とは何か ダムと堰と水門の違い(これで納得!堰堤の話)/多摩川散歩
二ヶ領宿河原堰 ところで堰(せき)とダムの違いって何でしょう?

上の写真は二ヶ領宿河原堰ですが、多摩川にはこのような大きな堰(せき)がたくさんあります。また、小河内ダムをはじめとして、大きなダムもいくつかあります。

ところで、堰とダムの違いって、いったい何なんでしょうか?

大きさによって区別しているのでしょうか?
それとも事業主が、何らかの自主ルールを作って勝手に付けているのでしょうか?
よくわからないので教えてほしい!
最近、こんな質問をときおり受けることがあります。

そこで、堰とダムの違いについて、記載しておくことにしました。
ついでに「砂防ダム」と普通のダムとの違い、「水門」と堰との違いについても整理しておきます。

ここでの説明が、日ごろのもやもやを解消するきっかけになれば幸いです。

堰堤(えんてい)の話・解説

ダムと堰の違い

堤高15m以上がダム、15m未満が堰

河川を横断して構築する構造物のうち、貯水を目的とする施設にはダムと堰がありますが、これらの区別はどうなっているのでしょうか。

1964年(昭和39年)に改定された河川法(=新河川法)によると、ダムに関する特則(第2章第3節第3款)の適用を受けるダムとは、「河川の流水を貯留し、又は取水するため第26条第1項の許可(河川区域内における工作物の新築等の許可)を受けて設置するダムで、基礎地盤から堤頂までの高さが十五メートル以上のものをいう。」と規定されています(第44条第1項)。

すなわち、堤高(=堤体の高さ)が15m以上のものを「ダム」と呼んでいるのです。

一方、河川管理施設等構造令(政令)では、「堰は、流水を制御するために、河川を横断して設けられるダム以外の施設で、堤防の機能を有しないもの」と規定されています。

すなわち、堤高15m未満のものが「堰」だということになります。

ダムと堰。堤体の高さによって区分されていたんですね。
一般には堤高が高い大規模なものがダムで、小規模なものが堰と考えて間違いありませんが、堰でも利根大堰や長良川河口堰など大規模なものもたくさんあります。あくまでも高さで区分しているのです。

注意:古いダムには15m未満のものもあります

旧河川法によるダム

ダムと堰とを堤高(=堤体の高さ)を基準にして区別することに決めたのは昭和39年からです。それ以前に制定された河川法(=旧河川法、明治29年制定)では、ダムと堰との区分が明確にされていませんでした。
そのため、昭和39年以前に施工されたダムでは、高さ15m未満のものでもダムと呼んでいるものがあります。注意してください。

また、ダムは古くは堰堤(えんてい)とも呼ばれていました。いまでも木曾川水系飛騨川に残る上麻生堰堤(かみあそうえんてい)など、○○堰堤と呼ばれるダムが日本各地に見られます。

砂防ダムについて

正式名称は砂防堰堤(さぼうえんてい)

砂防ダムは、いわゆる一般のダムとは異なり、水をためて利用するのではなく、土石流などの土砂災害防止を目的として設置するものです。
規定する法令も「河川法」ではなく「砂防法」が適用されます。

そのため近年では、一般のダム(貯水ダム)との違いを明確にするために、「砂防ダム」とは呼ばずに「砂防堰堤」と呼ばれるようになりました。

渓流釣りをする方たちのブログやサイトでは、いまでも「砂防ダム」という名前が使われることが多くありますが、正しくは「砂防堰堤」ということになります。

堰と水門の違い

洪水のときの操作が異なります(水門=堤防)

堰とよく似た構造物に水門があります。特に可動堰(引上堰)は、外見や形状が水門と大変よく似ているため、見掛け上、区別しがたい場合があります。

よく例示されるのが、常陸利根川が利根川に合流する位置に一直線上に設けられている「利根河口堰」と「常陸川水門」です。普通に見れば水門がずらっと並んでいるように見えるのですが、一方は堰で、他方は水門。この違いは何なのでしょうか?

一直線に並んだ利根河口堰と常陸川水門~堰とは何か ダムと堰と水門の違い(これで納得!堰堤の話)/多摩川散歩
一直線に並んだ利根川河口堰(奥:青色)と常陸川水門(手前:赤色)
(画像提供:carview)

じつは堰と水門には決定的な目的の違い、機能の違いがあります。

水門は洪水時にはゲートを閉鎖して堤防としての機能を持つのに対して、堰はゲートを開放して洪水をできるだけスムーズに流下させるものであって、堤防としての機能は持ちません。

洪水時にゲートを閉じるのが水門、逆にゲートをあけるのが堰というわけです。

利根河口堰と常陸川水門~堰とは何か ダムと堰と水門の違い(これで納得!堰堤の話)/多摩川散歩

先の利根河口堰の場合は、利根川の流量を制御すると同時に、満潮のとき海水が遡上してくるのを堰止める役割を果たしています。
一方、常陸川水門の方は、利根川が洪水になった時に常陸利根川に洪水が逆流しないように締め切るのが第一の役割になっています。つまり洪水のときは利根川の堤防の一部として機能するわけです。


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