多摩川散歩

東京都と神奈川県の境を悠然と流れる多摩川。多摩川の魅力をたっぷり紹介します。

多摩川アユの産卵時期と産卵場所
(天然アユの生態)

多摩川アユの産卵時期と産卵場所~多摩川に遡上したアユは、多摩川のどこで産卵するのでしょうか? 多摩川のアユの生態とりわけアユの産卵時期と産卵場所について紹介します。

多摩川アユの産卵/産卵時期と産卵場所
新二子橋~平瀬川合流点付近の瀬。多摩川でのアユの産卵場所のひとつです。

多摩川では毎年、数百万尾の天然アユが遡上してきます。多摩川の滋養をいっぱい受けて成体になったアユにとって、秋は重要な産卵シーズンです。

多摩川のアユは、いったいどこで産卵するのでしょうか?
産卵場所、産卵時期、産卵に適した水温、産卵床の条件などをまとめました。

多摩川の天然アユは、かつては江戸幕府の将軍家にも献上された「名産品」でした。

昭和の高度成長期(1960年代)には、水質汚染の影響により多摩川のアユは一旦姿を消しましたが、1975年を境に、再び天然アユの遡上が確認されるようになりました。
平成23年(2011年)には783万尾の稚アユが多摩川を遡上したと推定されています。

多摩川アユの産卵

多摩川のアユはどこで産卵するのか?

産卵時期

多摩川アユの産卵期間は、日中の最高水温が20℃を下回る10月中旬ごろに始まり、最高水温が16℃を下回る12月上旬頃にはほとんどが終了します。

アユは水温の変化に敏感です。夏が過ぎ水温が低下し始めると台風などの増水の流れに乗って川を下り始めます。「落ちアユ」です。
どこまで下るかは後述しますが、多摩川中のアユが、中下流域の産卵場所近くの瀬に集まってきます。

ここで卵が成熟するのを待って、水温が概ね20℃を下回るようになると、いよいよ産卵が始まります。

水温が20℃を下回り、18℃~16℃の頃に産卵のピークを迎えます。時期的には11月中旬~下旬頃が最盛期です。

多摩川アユの産卵場所

多摩川アユの主要な産卵場所は、次の二ヶ所だそうです。

  • ①国道246号新二子橋から平瀬川合流点付近の瀬(河口から約18km)
  • ②狛江の五本松前の瀬(河口から約25km)

ただし、これ以外でも、東急田園都市線橋梁下流の瀬や宿河原堰下流の瀬、上河原堰下流の瀬などにも産卵シーズンには水鳥がたくさん集まっていますので、ここらあたりでもアユの産卵が行われているものと思われます。

多摩川アユの産卵/産卵時期と産卵場所
東急田園都市線橋梁下流の瀬。産卵アユを狙ってたくさんのコサギが群れています。

アユの産卵シーズンは、魚食性の水鳥たちにとっては、おいしいごちそうに「楽してありつける」最高の季節です。 産卵で浅瀬に集まってきたアユや、産卵後に弱ったり死んだりしたアユが、さほど苦労せずに入手できます。

水鳥はアユの産卵場所をよく知っていて、産卵時期になると、どこからともなくたくさんの水鳥たちが集まってきます。
ここには写っていませんが、近くの浅瀬ではカワウの大群が羽を休めていました。

多摩川アユの産卵/産卵時期と産卵場所
こちらは上河原堰下流の瀬に群れるカワウとコサギ。

産卵シーズンはアユにとっては受難の季節でもあります。

多摩川アユの産卵環境

産卵床に求められるもの

アユの産卵は、水深10~30cm程度の、水アカが付いてない砂利とグリ石が混じるような平瀬で行われます。

平瀬とは流れが比較的緩い瀬のことで、波立つ流水の適度な撹乱作用で礫表面が洗われて、緩く堆積しています。
石の表面が藻やコケで汚れていては卵が付着できません。また早瀬のように流れが速すぎても産卵には適しません。

  • 多摩川アユの産卵/産卵時期と産卵場所
    狛江「五本松」前の平瀬で産卵するアユ
    (画像提供:多摩川ノート)
  • 多摩川アユの産卵/産卵時期と産卵場所
    砂利に産み付けられた卵
    (画像:同左)

産卵時刻

アユの産卵の時刻は、夕刻から、日没後のまだ空に明るさが残る時間帯です。
陽が西に傾き、直射日光が川面に届かなくなった頃、産卵アユは上流の淵やトロ場から、すぐ下流にある産卵場所の平瀬に移動してきます。産卵は夕方から始まり、薄暮の午後5時前後に産卵のピークを迎えます。

面白いことに、川で産卵するアユでも潮汐の影響を受けているようで、大潮の時期には明らかに産卵が多くなると言われています。産卵した有精卵は約15日で孵化します。

孵化したあとの生育環境

孵化したあと、アユの仔魚(=赤ちゃん魚)はどうなるのでしょうか?
詳しくは別ページにまとめていますので、興味がある方はそちらも参照してみてください。
 ⇒多摩川アユの稚魚はどこで育つのか

※ 卵が孵化して、仔魚として川を下り、海にたどり着いて稚魚にまで成長する様子を詳しく紹介しています。

↓↓ タイトルをタップ(内容表示)

多摩川アユの産卵観察会

アユが産卵している場所を観察できます

天然アユの産卵を実際に観るのはそれほど難しいことではありません。多摩川でも産卵アユの行動はほぼ解明されており、毎年決まった時期に決まった場所で、規則正しく産卵が繰り返されているからです。しかも産卵場所は水深が10~20cm程度と浅く、比較的容易に歩いて近づくことができます。

近年ではいくつかのグループが「アユの産卵観察会」を主催しており、申込さえすれば原則として誰でも参加することができます。

多摩川天然アユ産卵場観察会(おさかなポストの会)

外来魚の無責任な放流を防ぎ、多摩川の生態系を守る運動を続けているグループが主催するアユの産卵場観察会です。毎年開催されており、例えば平成23年は次のようなスケジュールで実施されました。

①11月27日【登戸・狛江地区】

開催日時
11月27日 13時30分~15時(雨天・増水中止)
集 合
小田急線・南武線「登戸駅」多摩川口13時出発
参加費
千円(ライフジャケットレンタル含む)
持ち物
股長靴か胴付き長靴があると、水に入って石に産み付けられた卵を自分で見つけることができます。(サンダル不可。胴長レンタルあり 2千円)
水中写真・映像撮影可
申し込み
メールか電話にて申し込み。
ホームページ http://homepage2.nifty.com/gasagasaaqua/

②12月4日【二子多摩川・二子新地地区】

開催日時
12月4日 13時30分~15時(雨天・増水中止)
集 合
国道246号新二子橋(平瀬川合流下流) 田園都市線「二子新地駅」13時出発
参加費
2千円(ライフジャケットレンタルと中州へボートで渡るためのレンタルボート料金)
持ち物
股長靴か胴付き長靴があると、水に入って石に産み付けられた卵を自分で見つけることができます。(サンダル不可。胴長レンタルあり 2千円)
水中写真・映像撮影可
申し込み
メールか電話にて申し込み。
ホームページ http://homepage2.nifty.com/gasagasaaqua/

多摩川散歩>動植物と生態系>多摩川アユの産卵|魅力いっぱい 多摩川散策情報